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法撃剣士スタークォーツ・パート2

法撃剣士スタークォーツ・パート2

 ウォパル漁港でオルクブランを倒したスタークォーツはハトミと共にオラクル船団へと帰還するが、それで任務が終了したというわけでもない。まだ処理すべき事後作業というものがある。
 まず、船外から帰還した者は必ず除染処理を受けることが義務付けられている。巨大とは言え密閉された空間で生活する世界にとって、病原菌の侵入を未然に防ぐ事は極めて重要となっている。
 移動に使ったキャンプシップはもとより、スタークォーツとハトミ自身、そして任務で使用した物資は全て除染対象となる。
 除染シャワーを浴て、体に付着した海水が取れてさっぱりとした気分になったスタークォーツだが、まだ終わりではない。次は任務の報告書を作成するという仕事が待っている。
 ゲートエリアと隣接しているアークス基地へ足を運び、そこにあるデスクスペースでスタークォーツはハトミと共に報告書を作る。任務中の行動を逐一記載し、その上で間違いがないか確認する必要があるので、報告書一つ作りにもそれなりの時間がかかってしまう。
 完成した報告書を提出し、基地を出る頃には人工太陽の消灯時間を過ぎていた。
「すっかり暗くなってしまいましたね」
 空を見上げると、天井を構成する超高強度ガラスドーム越しに宇宙空間が見える。オラクル船団は常に移動し、時にはワープで数光年先まで行く。そのため、この世界の夜空は毎晩違った姿を見せる。スタークォーツは自分の名前の由来でもある、星の輝きを見るのが好きだった。
「スタークォーツさん、初めての任務が成功したお祝いに、一緒にお食事でもどうですか?」
「良いですね。どこにしましょうか?」
「食用ラッピーの専門店を知っているのでそこにしましょう」
「ラッピー料理には前々から興味がありました。楽しみです」
 ラッピーはもともとナベリウスという惑星に生息していた鳥類であったが、最近になって家畜として飼育が開始され、食肉が流通するようになった。
 以前は市民への食料供給を最優先とされており、食肉用の家畜はたったの一種のみであったが、食料のバリエーションを増やす制作が施行されてからは、今では様々な食材が流通するようになっている。今回の任務で向かったウォパルの漁港も、オラクルの食卓にさまざまな魚介類を提供するために作られている。
「きっとスタークォーツさんも気に入りますよ」
 ハトミは微笑みながら言った。
「以前行ったときに印象的だったのは、衣を付けて揚げた料理や、野菜と一緒に串焼きにして甘辛いソースを付けた料理ですね。どちらも素晴らしく美味しかったです」
「来ているだけでお腹が空きそうです」
 二人はそんな会話をしながら基地の駐車場に止めている車へと向かっていった。
「あら?」
「ハトミさん、どうかしました?」
「いえ、車の中にリリーパ族のぬいぐるみが……おかしいですね。こんなもの車に置いていないはずですが」
 それを聞いた瞬間、スタークォーツは即座にハトミを抱えて車から跳び下がった。
 直後、乗り込もうとしていた車が爆発する。二人は爆風に煽られて地面の上を転がる。
「ハトミさん、大丈夫ですか!?」
「はい。体を少し強く打ちましたけど怪我はありません。でも、一体何が」
「車に爆弾が仕掛けられていたのでしょう。おそらく、あのリリーパ族のぬぐるみの中に」
 同時に、これがテロの類いではないともスタークォーツは理解していた。テロならばこんな人気のない駐車場などではなく、もっと人のいる場所に仕掛ける。これは自分たちを標的にした暗殺なのだ。
「流石だなスタークォーツ。いい勘してやがる」
 夜の闇の中から額から生えた角と青白い肌が特徴的な人種であるデューマンの男が現れた。
「ヴィーラス!」
 スタークォーツはこの男を知っていた。
「相変わらず卑劣な手を使うのね。剣士として恥を知りなさい」
 スタークォーツの糾弾に、ヴィーラスは鼻で笑う。
「相手を殺すのに卑怯もクソもあるか。勝ったやつが強くて、負けたやつが弱い。物事はシンプルだ」
「まるで自分が強い側のような言い分ね。卑怯な手を使ったにもかかわらず、私に返り討ちにされた情けない男はだれかしら?」
「黙れ!」
 その反応にスタークォーツは訝しんだ。ヴィーラスは卑劣で嫉妬深い男だが、この程度で激昂するほど短気ではない。以前の彼ならば皮肉には皮肉で返してくるはずだった。
 今だ燃えている車の炎がヴィーラスの顔を照らす。目が虚ろであった。それでスタークォーツは悟った。この男は今、正気を失っていると。
「俺はもうお前に負けたときとは違う。俺は最強の剣士になったんだ」
 ヴィーラスの手には暗闇に溶け込みそうなほどにどす黒い剣が握られていた。
「その剣はいったい……」
 その剣は一見するとただ黒いだけのように見える。だが、不可解なことにただ見ているだけだと言うのに、そのどす黒い剣から背筋が凍りつくほどの激しいおぞましさを感じる。この剣は本来はこの世にあってはならないとスタークォーツは直感する。
「ハトミさんは離れていてください」
「……分かりました」
 ハトミもこの男の危険性を悟っていた。スタークォーツを案じながらも彼女は離れていった。
 ヴィーラスの目的はスタークォーツであるようで、離れていくハトミは目もくれていなかった。
「死ね、スタークォーツ!」
 先手を取ったのはヴィーラスだった。上段から恐ろしい速度で振り下ろされる攻撃をスタークォーツを自らの剣で受け止める。一瞬でも反応が遅れていたら一太刀で倒されていただろう。生身の体なら冷や汗がどっと吹き出していたところだ。
「俺は無敵だ。俺は最強だ。こんなもんじゃまだまだ足りない。力だ、もっと力をよこせ!」
 ヴィーラスが自らの剣に向かって叫ぶ。すると、どす黒い剣からおぞましいエネルギーがにじみ出てくる。
「これはブラックフォトン!? ダーカー由来の力がなぜ!?」
 フォトンは二種類ある。一つはスタークォーツたちが使う、正当な(right)フォトンであるライトフォトン。もう一つは、ダーカーたちが使うブラックフォトンである。
 ブラックフォトンは知性の中にある悪心を増幅する力を持ち、ライトフォトンを宿していない者は正気を失ってしまう。ヴィーラスの様子はまさにそれであったが、この男もオラクル船団の出身である以上はライトフォトンを持っているはずだ。
 原因はヴィーラスが持つどす黒い剣だ。この剣からは今まで感じたことがないほどに邪悪なブラックフォトンの気配が伝わってくる。おそらく、あまりの強さに、ヴィーラスが持つライトフォトンが負けてしまっているのだろう。だから正気を失っているのだ。
「その剣を手放しなさい、といっても聞かないでしょうね」
「当然だ! お前を殺せる力をどうして手放すんだよ!」
 ヴィーラスの力が更に増す。このままでは押し負けてしまう。スタークォーツは力比べをやめ、どす黒い剣を外側へと受け流す。ヴィーラスがバランスを失って前のめりに倒れると同時に、スタークォーツは足払いを繰り出す。ヴィーラスは空中で1回転して背中から地面に叩きつけられる。
 スタークォーツは剣を逆手に持ち替え、仰向けに倒れるヴィーラスの胸に突き刺そうとした。生かして捕らえること考えなかった。この男はここで殺さなければならないほどに危険だと、剣士としての本能が告げている。
 その時、スタークォーツは背後から殺気を感じ取った。本能的に回避しようとしたのと、地面から黒い刃が突き出てきたのは同時であった。
 ヴィーラスの剣と同じ、暗闇が形をもったしたかのようなどす黒い刃がスタークォーツの左腕を切断した。破損箇所からは強烈な痛覚信号が発せられ、スタークォーツの脳神経を苛む。
「ああっ!」
 苦痛で思わず悲鳴をあげてしまう。ボディに内蔵された神経系制御プログラムが過剰すぎる痛覚を即座に停止させ、スタークォーツの精神を保護した。
「スタークォーツさん!」
「まだ大丈夫です!」
 思わず駆け寄ろうとするハトミをスタークォーツは制止した。腕を一本失ったが、残る腕には剣が握られている。まだ戦える。
 スタークォーツは剣を構える。
「ヒヒヒ、腕一本でどこまでできるかな?」
 ヴィーラスが狂気を孕んで笑みを浮かべる。
 スタークォーツの腕を切断したのはテクニックによるものだ。見た雰囲気ではメギド系列のようだが、あのようなテクニックはアークスでは使われていない。
 周囲の地面から多数の殺気が生まれると、そこから再び黒い刃が次々と突き上がってくる。スタークォーツは剣で攻撃を弾きつつヴィーラスから離れるが、黒い刃は追いかけるかのように次々と出現していく。
 未知のテクニックに防戦を強いられる。だが、その中で黒い刃が出現しない場所を見つけた。燃え盛る車の炎や、駐車場の照明が照らしている場所。すなわち、影が存在しない場所であった。
「なら、これで!」
 スタークォーツはイル・ゾンデのテクニックを発動させた。彼女の体は強力な電流に包まれ、そのまばゆい電光で周囲の暗闇を一掃する。それでもなお、黒い刃は光の届いていない場所から攻撃してくるが、スタークォーツには届かない。刃を伸ばせる限界は一メートル半といったところか。
 スタークォーツは一瞬でヴィーラスの懐に飛び込む。イル・ゾンデは高速移動のテクニックであり、ライチョウ流は剣術に活用した。雷をまとい、嵐のごとく剣を振るう。これこそライチョウ流、【イル・ゾンデ:嵐の型】である。
 スタークォーツの超人的な高速攻撃をヴィーラスは巧みにさばいていく。スタークォーツはかつてヴィーラスと剣を交えたことはあるが、その時とは別人といっていいほどの技量であった。
 イル・ゾンデの力をスタークォーツは更に強めた。体にまとう電力を高めれば高めるほどに速度は増すが、同時に使用者自身を傷つけてしまう。無論、彼女はそれを承知であったが、そうしなければヴィーラスを倒せない。生死を分ける境界線、その上に立つ境地に達せなければならない。
(もっと、もっと速く!)
 スタークォーツは加速し、激しく剣を振るう。そのあまりの速さに、傍らで見ていたハトミが複数の太刀筋が同時に繰り出されたかのように錯覚するほどだ。そして、スタークォーツの速度が頂点に達した時、ヴィーラスの技量を上回った。
(獲った!)
 スタークォーツが確信したと同時に、彼女の剣がヴィーラスの首をはねた。
 体から切り離されたヴィーラスの頭が中を舞う。その顔には死の恐怖や敗北の屈辱ではなく、余裕の笑みが浮かべられている。
 何かがおかしいと思った瞬間、ヴィーラスの首の切断面から赤黒い触手が伸び、頭と体をつなぎ直した。
「あーあ、やられちまった」
 首をはねられたと言うのにヴィーラスは平然としていた。普通なら死んでいるはずなのに、まるで戯れに始めたゲームに負けた程度にしか思っていない。スタークォーツのヴィーラスを生かしてはならぬという直感は正しかった。この男はもはや人ならざるものなのだ。
「まあいいか。お前の底はしれた。けど、こいつとはもうちょっと馴れ合った方が良さそうだ」
 ヴィーラスが剣を振ると、空間に裂け目が生まれる。
「じゃあな」
「待ちなさい!」
 スタークォーツは追いかけようとするが、突然体が動かなくなって倒れてしまう。【イル・ゾンデ:嵐の型】でボディを酷使したためだった。その間にヴィーラスは姿を消し、空間の裂け目は何事もなかったかのように消え去ってしまった。
 遠くから警備隊のサイレン音が聞こえてくる。車の爆発を察知して来たのだろう。
 ヴィーラスに何があったのだろうか。そしておぞましいほどにどす黒い剣は一体何なのか。その答えがわからぬまま、スタークォーツは気を失った。

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